これは、16~17世紀の日本におけるキリスト教と、それに関わるトピックに関心のある方に役立つリソース(データベース、リポジトリ、プロジェクト)のリストです。リストはアルファベット順になっています。
Bibliotheca Sinica 2.0
「Bibliotheca Sinica 2.0」は、中国と西洋の交流に関する1939年以前のデジタル化された図書を集めた書誌である。キーワード検索、タグ検索、著者の姓のアルファベット順検索により、テキストを検索することができる。WordPressで構築されたこのサイトは投稿された書誌事項を系統立てて掲載しており、テキストに関する書誌情報、デジタルコピーを保有するリポジトリへのリンク、およびデジタル化されたフォーマットがある場合には1939年以前の翻訳を見つけることができる。当プラットフォームは日本におけるキリスト教の歴史と直接関係するものではないが、東アジアのイエズス会に関連する多くの資料を含んでおり、イエズス会の日本での布教活動に関連する一次および二次資料を探す人々にとっては有用となりうる。検索機能が限られているため、新しいテキストを探すために当プラットフォームを利用するよりも、すでに検索したことのあるテキストを探すためにこのリソースを利用する方が有用な場合が多い。
Chinese Christian Text Database
「The Chinese Christian Text Database」は、1582年から1840年までの中国と西洋の交流に関する一次資料と二次資料を収録した書誌データベースである。各エントリには、広範な書誌情報が記載されている。これには、文書形態についての説明、他の書誌での掲載情報、テキストの内容に関する注記、翻訳に関する情報、図書館での複製に関する情報、ファクシミリやリプリントに関する情報などが含まれている。また、デジタル化された書籍へのリンクがある場合は、そのリンクも提供している。基本検索と詳細検索のオプションがあり、さまざまな書誌情報に関連するパラメータが用意されている。このデータベースは主に中国に焦点を当てているが、日本に関する多くの資料も含まれており、そのほとんどはヨーロッパ言語で記述されている。日本におけるキリスト教史の研究に関心を持つ人々にとって有用なリソースであるが、現状では十分に活用されていない。
江戸時代における人口分析システム(Danjuro)
「江戸時代における人口分析システム(Danjuro)」は、江戸時代の文献から抽出された各種人口データの分析システムで、2013年に川口洋氏によって開発された。当プラットフォームのデータおよび「宗門改帳」の分析ツールは、特に反キリシタン政策の研究者にとって興味深いものであろう。
当プラットフォームの「宗門改帳」分析システムには、1750年から1869年にかけて書かれた13の村の文書データが収録されている。これらを利用するには、インデックスページからアカウントを申請する必要がある。アカウント作成後、プラットフォームで2つの主要な機能が提供される。一つ目は、さまざまな文書と、その文書に記載されている世帯や個人を検索するための、一連の強力な検索ツールである。二つ目は分析プログラムで、システム内の文書から定量化されたデータを素早くダウンロードし、分析することができる。このように、13村の文書に限定されたデータではあるが、容易にアクセスし、研究に取り入れることが可能である。
ジャパンサーチ:「潜伏キリシタン」に関するギャラリー
ジャパンサーチが提供する「潜伏キリシタン」に関するギャラリーは、近世日本におけるキリシタンに関する資料を集めたものである。当ギャラリーは、ジャパンサーチの100以上の連携機関が保有する膨大なデータベースを活用し、歴史的な出来事、一次資料、二次資料、伝記、美術品、工芸品、映像などを集約している。これらはすべて、各提携機関のウェブサイトへのリンクを通じて閲覧することができる。また、不完全ではあるが、キリシタン関連の展覧会やキリシタン資料を所蔵している博物館の簡略なリストも掲載している。これは、異なる機関にまたがるキリシタン資料の研究の出発点として、特に有用である。また、「関連するひと・もの・こと」のセクションのリンクをたどると、島原の乱、天正遣欧少年使節、キリシタン大名などの関連資料も見つけられる。ただ、この膨大な資料の難点として、日本語以外の資料が少ないことが挙げられる。
ラウレスキリシタン文庫データベース
「キリシタン文庫」は、キリシタン研究に関心を持つすべての研究者の間で、キリシタンおよび20世紀以前の日本におけるカトリック資料の最も完璧なコレクションとして知られている。日本で制作されたものをはじめ、日本に言及したヨーロッパの作品、東アジアの地図、キリシタンの遺品など、15,600点を超えるコレクションを有している。当コレクションは、日本とヨーロッパのイエズス会のつながりを研究するために、1939年にヨハネス・ラウレス氏によって創設され、1950年代まで書誌が印刷・更新されていた。その後、2004年にオンラインデータベースが編纂・公開された。
当データベースはすべて検索可能だが、多言語で書かれた作品が含まれているため検索語の選択には注意が必要で、データベースの機能を使用して検索条件を絞り込む必要がある。データベースは「エッセイ」「資料」「翻刻」の3つのセクションに分かれている。「エッセイ」セクションは、ラウレスの書誌(『上智大学吉利支丹文庫』)を日本語と英語で更新・改訂した文献と、オンラインデータベースを公開した際に書かれた序文で構成されている。ここでは、イエズス会および19世紀のカトリック教徒の日本における印刷事業の歴史に関する重要な情報を得ることができる。
「資料」と「翻刻」のセクションは、研究者の関心を最も引きやすい。「資料」セクションは「日本出版」「維新出版」「ヨーロッパ出版」「アメリカーナ」「東アジア地図」「キリシタン関連品」に分類され、さまざまなテキストの書誌情報を提供している。データベースの項目には、書誌データ、当該文献に関する注記、世界各地の所蔵先など、ラウレス著『上智大学吉利支丹文庫』から引用された情報が掲載されている。「東アジア地図」と「キリシタン関連品」のセクションに含まれる文献は、書誌データだけでなく、デジタル化され、テキスト化されたものも転写されている。画像そのものは非常に質が高く、特に書簡の転写は有用であるが、反キリシタンの高札9個のうち5個しか翻刻されていないのは残念である。また、アーカイブ内の資料の大半がデジタル化されていないことも問題である。
最後に、「翻刻」セクションには完全な文書が合計6部掲載されているだけだが、特にテキストの画像と翻刻にユーザーを誘う。興味深いのは、これらデジタル画像を翻刻と重ね合わせることができる点である。画像上の任意の文字をクリックすると、その文字が何であるかを教えてくれるので、古文書の読み方を勉強しやすい。文書の現代語訳が追加されているのもありがたい。前述したように、この機能の主な問題は、6部の文書にしか対応していないことである。コレクション自体は膨大で感心させられるが、もっと多くの文書がデジタル化され、あるいはデジタル転写でアクセスできるようになれば、上智大学に直接足を運べない人にも研究の可能性が広がるであろう。
アクセス:https://digital-archives.sophia.ac.jp/laures-kirishitan-bunko/
宣教に伴う言語学研究
豊島正之氏によって作成・管理されている、「宣教に伴う言語学研究(Missionary Linguistics)」は、日本語学や日本の宣教師によって作成された辞書に興味のある研究者にとって、非常に貴重なリソースである。さまざまな辞書の完全検索が可能で、複数の検索エンジンに分かれている。JPDICT(日本近代辞書・字書集)には19世紀後半の辞書が4冊、LGR(対訳ラテン語語彙集)にも8冊、LGRI(イベリア半島でのラテン文法)にはさらに4冊、最後にLGRM(丸山徹校訂ポルトガル語正書法書類)に 9冊の辞書が収録されている。各データベースはそれぞれ独自の用途を持つが、それらが結集して、キリシタン研究のための検索可能な辞書として最も完全なコレクションを形成していることは間違いない。
JPDICTのデータベースは特に強力な検索機能を備えており、辞書項目、定義、語源による検索ができ、ピッチアクセントによる検索が可能な辞書もある。検索結果には、NDLでデジタル化されたテキストへの画像リンクも表示される。他のデータベースが画像リンクを提供していないのは残念であるが、豊島氏自身が書いているように、これはサーバーコストのためで、やむを得ない。他のデータベースは検索機能がそれほど充実していないが、それでも特定の辞書や言語で絞り込むことができる。当ウェブサイトでは「青空文庫」の検索も可能であるが、これは上記のリンクから直接検索機能にアクセスしないと見つけにくい(参考までに説明すると、JPDICTの検索を行い、少し待ってから、ページ上部の「AOZORAにも2つの用法がある」などといったリンクをクリックする必要がある)。
前述した「青空文庫」の検索機能の例には、「宣教に伴う言語学研究」におけるユーザー・インターフェースの主な問題点が集約されている。当ウェブサイトはナビゲートするのが難しく、隠れていて見つけにくい機能もある。たとえば、ほとんどのデータベースはトップページに掲載されているが、「関連言語資源」のページにしか掲載されていないものもある。また、サイト名が一般的なものであるため、グーグル検索で見つけるのが難しく(ユーザーや場所などにもよるが)、覚えにくいURLも助けにならない。そのため、当サイトはブックマークしておく価値がある。とはいえ、これらの潜在的な問題を克服し、少し難解なデザインに慣れることができれば、当ウェブサイトは貴重なものとなるであろう。
2024年3月にウェブサイトのサポートは終了し、データベースにもアクセスできなくなった。
国立国語研究所のプロジェクト
大英図書館が所蔵する天草版『平家物語』『伊曽保物語』『金句集』について、国立国語研究所(NINJAL)の協力のもと、いくつかのプロジェクトが行われた。その第一はデジタル化である。この3冊のテキストはもともと1冊の本にまとめられており、巻末には用語集と語彙集が掲載されていて、オンラインでは別々に閲覧することができる。写真は高画質・高解像度で、どのページの画像をクリックしても新しいタブで開き、ダウンロードできる。これらの写真は、そのテキスト研究と、これら貴重な資料へのアクセスの増加に役立つことは間違いない。
NINJALのウェブサイトには、テキストから得られたデータを利用したさまざまな二次プロジェクトが掲載されており、ユーザーはそのページに移動すれば、プロジェクトの他の部分にもアクセスすることができる。最も範囲が広いのはテキスト・コーパスで、これはNINJALの『日本語歴史コーパス』の一部となっている(英語版のサイトもある)。このコーパスには、NINJALが作成した日本語への音訳とともに、作品の書き下し文が含まれている。また、言語学プロジェクトに必要な形態素情報も注釈として記載されている。当ウェブサイトで述べられているように、このコーパスはキリシタン研究だけでなく、当時の日本の言語についての研究にも役立つ。しかし、NINJALの他のコーパスと同様、データにアクセスするには『中納言』サービスにユーザー登録する必要があり、完全なオープンアクセスではない。ただし、平家物語と伊曽保物語の全文データ(書き下し文と日本語音訳はあるが、形態素タグはなし)はウェブサイトからダウンロードできる。
このデータは、現在完了している『伊曽保物語』(イソップ物語)に焦点を当てたプロジェクトで活用されており、本文の画像スキャンとコーパスの日本語音訳を組み合わせて用いられている。ユーザーは、音訳の表示を天草版画像と並べるか、上に重ねるかを選択できる。この機能は、ラテン語化された音韻とそれが表す日本語を比較するのに便利である。ただ一つ問題なのは、このプロジェクトがカバーしているのは『伊曽保物語』の一部だけで、全文ではないということである。もし、この技術がより多くの画像に適用されれば、さらに有用性が増すだろう。
大英図書館の天草版に加えて、オースタカンプ・スヱン氏、ノイツラ・ゾフィー氏、宮川創氏が作成したHerzog August Bibliothekの『コンテムツス・ムンヂ』の全文翻刻にも、NINJALのサイト(英語版)からアクセスできる。
これらのプロジェクトは、デジタル化がいかに文書へのアクセスをオープンにし、また、創造的な方法での利用を促すかを示す、注目すべき例である。
ベッソン・コレクション
「ベッソン・コレクション」は、筑波大学附属図書館が所蔵する16~17世紀の日欧関係図書377冊をデジタル化したコレクションである。当コレクションには、日本国外で出版されたキリシタン版4冊、イグナチオ・デ・ロヨラとフランシスコ・ザビエルに関する書物64冊、天正遣欧使節に関する書物19冊、日本二十六殉教者に関する書物16冊、慶長遣欧使節に関する書物6冊、宣教師の報告書や書簡194部、雑文74部が含まれている。これらの書物のほとんどは16世紀から17世紀にかけて出版されたものであるが、18世紀から19世紀初頭の書物もわずかに含まれている。ベッソン・コレクションは、初期の日欧交流に関するヨーロッパ言語で書かれた一次資料および初期の二次資料をデジタル化したものとしては、最大規模のレポジトリだと思われる。必要不可欠な資料であるが、十分に有効活用されていない。
テキストにアクセスするには各テキストのリンクをクリックする。その後、筑波大学附属図書館のチューリップス・システムに登録されたテキストに移動し、テキストの保存データ(請求記号など)の下にある「電子資料を表示」のボタンをクリックすると、デジタルコピーを閲覧することができる。デジタルコピーはモノクロで、一連の簡単なオプションを使って操作することができる。専用ページ自体には検索機能はなく、2008年以降更新されていないため、コレクションへのアクセス方法の説明が古い。さらに、モノクロでデジタル化しているため、コレクションの一部(特に図版)の画質が悪く、資料のパラテキストに興味がある人は落胆するかもしれない。
バチカン図書館所蔵マリオ・マレガ資料データベース
「マリオ・マレガ資料データベース」は、バチカン図書館所蔵マリオ・マレガ資料14,643点のデジタル化された史料と書誌情報を含む大規模なプロジェクトであり、その多くはキリシタン教に関するものである。人間文化研究機構国文学研究資料館によって史料のデジタル化が行われ、日本語、イタリア語、英語、ドイツ語で書かれたさまざまな文書が自由に利用できるようになった。コレクション自体はマリオ・マレガ神父が収集したもので、その多くは臼杵藩の宗門改に関するもの(11,938点)であるが、他の藩の文書(413点)、マレガ神父の執筆または収集物(2236点)、その他(56点)も含まれている。キリシタン研究者にとっては、前述の臼杵藩の宗門改に関する文書が最も興味深いが、マレガの著書やメモのコピーを含む個人的なコレクションも興味深い資料であろう。
ファイリングシステム(「マレガ調査階層」と呼ばれる)は、バチカン図書館で資料を保存袋に入れて保管していた状態に基づいているため、ユーザーにとっては、検索バー機能(または「マレガ史料群階層」)を使って特定のアイテムを探す方法が最も簡単である。検索してアイテムをクリックすると、大量の書誌情報とデジタルスキャンが表示される。文書の差出人や宛先に関連するものを含む書誌データは広範囲にわたるので、コレクション内の異なる文書間のリンクは作りやすい。とはいえ、データ量が膨大なため、このプラットフォームは非常に便利だが、ナビゲートが難しい。
当リストに含まなかったもの
当リストでは、16~17世紀の日本におけるキリスト教というトピックよりもはるかに範囲の広い資料の数を制限するよう努めました。物理的な形のある著名なコレクションは、コレクションのページで閲覧することができます。また、Internet Archive(無料、特にARSIとJesuiticaコレクション)、国立国会図書館デジタルコレクション(無料、一部閲覧制限あり)、HathiTrust(無料、一部閲覧制限あり)、Google Books(無料・有料)、JapanKnowledge(有料)、丸善電子ブックライブラリー(有料)など、デジタル化された一次資料や二次資料の重要なコレクションもあります。また、同志社大学デジタルコレクションに所蔵されているキリスト教関連のコレクション、小規模なコレクションも見つけることができます。
当リストに加えるべき資料がありましたら、kirishitanbank[at]gmail.com([at]は@に置き換えてください)までメールでご連絡ください。
編集: ジェームズ・ハリー・モリス、ジョセフ・ビルズ、2023年
最終更新日: 2024年7月